抄録
[目的]福岡県の都市部、農村および漁業地区でどのような種類の魚介類がいかなる調理法で食べられているかを明らかにするために調査を行い、摂取の現状とその調理特性について検討した。
[方法]福岡県福岡市、久留米市近郊農村および柳川市近郊の各10世帯ずつとした。各世帯における魚介類の調理文化と地域性に関する調査について、平成15年11月から12月に聞き取り法で実施した。
[結果・考察]魚介類の調理法に関して、魚の使用種類数は1世帯あたり福岡市29.5種類、久留米市近郊17.2種類および柳川市近郊19.2種類であった。各地域間の使用数は福岡市と久留米市近郊間および福岡市と柳川市近郊間では共に5%の有意性がみられた。久留米市近郊および柳川市近郊は、地方都市近郊の農村および漁業地区ではあるが有意性がみられなかった。これらのことから福岡市ではデパート、大手スーパーマーケットから種々の食材を簡単に入手できる便利な地域であるといえる。久留米市近郊は都市近郊農村であり、食材をスーパーマーケットで購入する場合と、農作物を自家栽培する場合とに分けられる。柳川市近郊では有明海に面し、ワラスボ、海茸などの特有の魚介類も入手可能であった。また、魚料理数は1世帯あたり福岡市35.5種類、久留米市近郊27.3種類、柳川市近郊26.3種類の料理数があげられた。3地域における調理法(生物、煮物、揚げ物、焼き物、汁物)の上位5種類の出現度については、地域によって出現率は異なり1%の有意性で認められた。煮物、焼き物については、福岡、久留米の両市と柳川市の間には1%の有意性が認められた。魚介類の地域特有の食べ方として、福岡市では博多五目雑煮、博多押し、久留米市近郊ではかます鮨、柳川市近郊ではうなぎ飯、がん汁などが挙げられた。地域特産の素材を生かした特徴的な料理が一部にみられたことから、地域の食文化に根ざした調理法の伝承の必要性が考えられる。