抄録
【目的】健康志向の高まりと共に、インドネシアの発酵食品であるテンペが注目されている。テンペは菌糸で大豆がしっかりと固められており、薄く切ることができるため、加熱調理が容易である。軟らかく生食することも可能で消化吸収が良いとされ、栄養価も高いテンペの調理上の利点について検討した。
【方法】テンペを作成し、発酵時間による固さの違いをレオメーターで測定し、同時にその食品の組織を観察した。さらにテンペの調理食材としての利用状況を調べると共に、調理過程で付加される物性や味の変化について、官能検査とアンケート調査によって分析した。
【結果】テンペは、菌種や発酵時間によってその固さなど物性の違いが生じ、官能検査との関連が見られた。テンペと同時に調味液に浸けた牛肉と、調味液のみに浸けた牛肉を調理して固さを比較したところ、テンペ付加牛肉の方が軟らかくなっていた。また、テンペを市販のしょうゆに添加したものと、しょうゆそのものとで味についての官能検査を実施したところ、テンペ入りしょうゆの方が好ましいとした者が多かった。肉や調味液にテンペを付加した場合、味が悪くはならないあるいは良くなる、肉質の軟化から肉が食べやすくなるという利点が生じていた。食材としてのテンペの利用と同時に、今後高齢者の食生活に広がりをもたらすテンペの調理上の有用性をさらに検討している。