抄録
目的:チーズは、タンパク質の基質に脂肪を取り込み、脂肪は球状あるいは不定形な形をなしている。タンパク質の基質および脂肪には、複屈折性を示す結晶が存在している。本研究では、青カビチーズとハードタイプチーズにおける基質および脂肪の形状ならびに複屈折性を示す結晶の分布について調べた。
方法:輸入された市販の青カビチーズ(ロックホール、スチルトン)およびハードタイプチーズ(パルメジャーノ・レッジャーノ、ゴーダ)を用いた。これらのチーズから1cm×1cm×0.5cmの材料を切り取り、急速凍結して、クリオスタットで薄切した。切片をエオジンおよびオイルレッドOで染色した標本ならびに無染色の標本を作製した。標本を明視野と偏光装置による暗視野で観察した。
結果:ハードタイプチーズの基質は網状を示し、ゴーダの網の目は細かかった。青カビチーズの基質では、網状の網の目が壊れて糸が絡み合った状態を示していた。ハードタイプチーズとスチルトンの基質には、区分け状の構造があるが、ロックホールにはなかった。脂肪は、球状もしくは不定形をなすが、スチルトンでは、主に網状のように繋がった形をなしていた。これらの脂肪の中には、複屈折性を示す脂肪が存在した。また、青カビチーズで、大きな結晶がカビの増殖部位に存在した。ハードタイプチーズの基質には、小さな結晶が散在し、パルメジャーノ・レッジャーノでは所々に大きな結晶が存在した。複屈折性を示す結晶は、染色した標本よりも無染色の標本において多く観察された。