抄録
目的 食物の色彩は人間の食欲に影響を与え、視覚情報による色彩と味覚にも関連があることが、これまでの演者らが行った研究で明らかになった。本研究では脳内では食品の色と食欲増進あるいは減退にどのような関連性があるのか、五味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)の味覚刺激によって脳波に違いがあるか否かについて検討を行った。
方法 広島近郊の女子大学生健常者を対象に、2003年から2004年にかけて、脳波測定を行った。測定機器は日本光電製脳波計EEG-1518を用いた。まず、安静時の脳波測定を行い、視覚的刺激による脳波測定では、被験者に赤・オレンジ・茶・黄・黄緑・緑・青・紫・ピンク・黒・透明の飲料・ゼリーの計22種の試料を提示し、各試料からうける視覚刺激により誘発される脳波を測定し、食欲・感じる味・イメージする食品について口頭でのアンケートを行った。それぞれの脳波データを高速フーリエ変換し、各電極のピーク周波数(Hz)とそのピーク周波数の振幅値(μV)を求めた。
結果 電極Fp1・F3において視覚的刺激による飲料の脳波値の人数分布では、食欲を感じる色(赤・オレンジ・黄)は低く、食欲を感じない色(黒・緑・青)は高い傾向がみられた。視覚的刺激による液体(飲料)と固体(ゼリー)の脳波値の人数分布を比較すると、固体(ゼリー)のほうが液体(飲料)に比べ脳波値が低い傾向がみられた。色からイメージする味と、味覚的刺激時の脳波値の人数分布に相関がみられた。