日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成17年度日本調理科学会大会
セッションID: P-52
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ポスターセッション
住宅の変遷と共に消滅した調理・食品加工・保存法(1)
-いろりの熱灰・煙・周辺熱の利用-
*高橋 洋子五十嵐 由利子
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キーワード: いろり, 熱灰, 燻製品, 貯蔵場
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抄録

目的: 住宅の変遷と共に、住宅内外で行われていた調理や食品加工・保存等が難しくなったり、消滅したりしたものがある。本報では、燃料革命によって急速に姿を消した「いろり」に着目し、食材や燃料を有効活用してきた先人の智恵に学ぶ。
方法: 県史・市町村史の民俗編や、『日本の食生活全集』等を資料として、いろりの熱灰・煙・周辺熱を利用して行われていた調理・食品加工・保存法について、および、いろりが消滅した後に行われている、それらの代替手段などについて調査した。
結果: (1)熱灰:徳利を熱灰に差し込んで酒を燗したり、栗・芋・団子などを熱灰に埋めて焼いたり、加熱や保温に広く利用されていた。草木の葉や竹の皮、濡らした紙などに包んだ食品を熱灰の中に入れ、蒸し焼きにする例もみられた。おやき(長野)・豆しとぎ(青森)・がねみそ(高知)など、いろりが消滅した現在、蒸す・茹でる・揚げるなど、別な方法で作られているものもある。(2)煙:いろりの上の火棚やその周辺に食品を吊して燻製にし、独特の風味と保存性を付加した。燻し大根漬(秋田ほか)・燻り豆腐(岐阜) ・甲子柿(岩手)など、現在では専用の燻煙設備を用いて製造され、商品化されているものもある。(3)周辺熱:いろりで継続的に火を焚くことにより、周辺はやや高温で乾燥した環境になったと考えられる。そのような環境を利用して、味噌や納豆を作る、焼き干し魚を作る、芋類(里芋・蒟蒻芋・山芋等)を貯蔵するなどしていた。また、いろりの脇の床下に専用の設備を設けて芋や大根等を貯蔵したり(新潟・岐阜・秋田ほか)、いろりの上の屋根裏部屋や中二階で、蒟蒻芋を保管したり雑穀を貯蔵したりしていた。
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© 2005日本調理科学会
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