日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1A-a1
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口頭発表
雑誌『庖丁鹽梅』に現れた調理教育
-料理人による男女両性への啓発-
*今井 美樹
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抄録

【目的】日本料理の専門家によって最も早く創刊された料理雑誌として1886(明治19)年12月創刊の『庖丁鹽梅』がある。これまでの2つの報告においては,第1報では『庖丁鹽梅』の調理理論の啓蒙について分析を行い,それらの記事の内容が5つに分類されることを明らかにした。第2報では明治期に出版された2種の料理雑誌『庖丁鹽梅』と『月刊 食道楽』の記事を比較・分析し,明治期の食生活において求められた内容の特徴を明らかにした。ここでは主婦の役割と調理への近代科学の導入について変化がみられた。本報告では,この雑誌の掲載記事のなかから明治中期の専門料理人が行った男女両性への調理教育について明らかにすることを目的とした。
【方法】『庖丁鹽梅』全37集(1886-1891)の掲載記事のなかから,明治中期の専門料理人の調理およびその教育について記述していると判断された記事をジェンダー視点で精査した。
【結果】従来の調理教育においては,男性の料理人に対する調理教育と家庭の主婦むけの調理教育の2つが示されてきたが,精査した結果,(1)男性である料理人に対する調理教育,(2)自営的な料理店のおかみに対する職業教育としての調理教育,(3)家庭の主婦の調理教育の3つがあることが明らかになった。『庖丁鹽梅』ではこれら3つの調理教育の実現普及を図るための料理学校設立の提案を行っている。当時の料理人が徒弟制度のほかに,男性と女性の双方を対象に職業を前提とした調理教育を行なっている点は注目に値する。

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