日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 1A-a5
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口頭発表
福島県中山間地域における郷土食品としての凍みもちの調理学的考察
*福永 淑子前田 文子黒川 理加小澤 陽子永嶋 久美子
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抄録

《目的》凍みもちは東北地方の冬の寒さを利用して作られる伝統食品で、福島県鮫川村では現在も日常の食材として利用されている。もち米とうるち米を混ぜて、山ゴボッパ(山ごぼうの若葉を乾燥したもの)を加えて搗きあげた餅を、冷水に浸漬した後に、軒下に吊るし、低温にさらし凍結させ、約2ヶ月間かけて完全に乾燥させる。この伝統食品は先人の知恵の蓄積であり、合理的な技術や工夫が凝らされていると考えられるが、調理的な調査が行われたことはない。そこで、凍みもちを現代の食生活にも生かすことを目標として、作り方とその利用方法を調理学的観点から考察した。《方法》試料は鮫川村で調製された凍みもちを用い、対照として市販の密封パックの切り餅を使用した。凍みもちは、水で戻した後に加熱して、官能検査およびテクスチャアナライザーにより硬さ、粘り、付着性の物性測定を行った。物性測定条件は、直径20mm円柱形のプランジャーを用い。プランジャースピードを5mm/s、圧縮率を70%とした。《結果》物性測定の結果、凍みもちは切り餅に比べ、ゆでた際にはやや柔らかく、粘りはかなり強く、付着性は弱いことが明らかになった。これら物性にはうるち米が混合されていることと、山ゴボッパが加えられていることが影響していると思われる。官能検査では、ゆでた凍みもちと切り餅を二点識別嗜好法により比較したところ、「餅の食べやすさ」「餅の柔らかさ」「総合的な好み」において、有意差をもって凍みもちのほうが優位であった。喉につかえ難く、食物繊維も含む凍みもちを介護食として利用できる可能性は大きいと思われる。

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