抄録
【目的】
真空調理は調味料の浸透性がよい調理方法だと一般的に言われている。しかし、明確な比較は行われていないため、真空調理と常圧調理の調味料の浸透性を比較し、真空調理における調味特性を明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
調理方法は真空調理及び常圧調理とした。試料として大根を用い、生及び予備加熱済みの試料を15%及び5%食塩水中で、一定時間(0、5、10、15、30、60分)加熱にともなう重量変化、全体及び内外部の食塩の浸透性を分析した。また硬さについても検討した。
【結果及び考察】
重量変化は15%食塩水、60分加熱で、真空調理時の初期重量比は85.0%、常圧調理時は81.8%となり、真空調理の方が3%ほど目減りを防ぐ効果があると考えられた。食塩の浸透は生試料を15%食塩水で真空調理30分加熱時の試料全体食塩濃度は8.0%、内部は4. 8%となった。常圧調理の同条件では全体が6.2%、内部は3.3%であり真空調理が常圧調理よりも有意に食塩浸透が高かった。一方、5%食塩水、30分加熱時の試料全体の食塩濃度は両者間に有意の差が認められなかったが、内部は真空調理時1.5%、常圧調理時1.2%で有意差が認められ、真空調理の方が内部への食塩浸透が高い調理法と言えた。また15%食塩水、30分加熱の生試料と予備加熱済み試料間に差がなかったことから、真空調理時に生試料を使用しても予備加熱済み試料と同じ程度の食塩浸透があると示された。これは真空包装時に、細胞中の空気が抜けることで細胞の半透性が低下したためと考えられる。硬さの変化は生試料を15%食塩水、30分間加熱時の真空調理及び常圧調理の破断応力に有意差が認められなかったが、外観比較では真空調理による試料は形の崩れが少ないことが示唆された。