抄録
【目的】
近年、特定給食施設などで導入されている新調理システムの中で、特に真空調理システムは簡便であり、従来の調理法に比べ、食品の形態をくずすことなく軟らかく仕上げることができ、衛生的、経済的であるという利点から注目されている。そこで、本研究ではじゃがいも、にんじん、豚肉を試料とし、真空調理法および通常調理法で肉じゃがを調製し、真空調理法が食材に及ぼす影響について検討した。
【方法】
(1)真空加熱条件検討:試料をじゃがいもは1個25g、にんじんは15gになるように調製し、水または調味液と共に真空包装(真空度98%、真空吸引60秒)後、スチームコンベクションオーブン(庫内温度95℃)で加熱した。調味液は試料重量に対して醤油6.3%、塩0.3%、砂糖5.0%、酒5.0%、だし汁30%の分量で混合し用いた。加熱後、中心温度が90℃になった時点の15分後から65分後までの間、10分ごとに試料を取出し、重量、中心温度、破断強度を測定した。(2)肉じゃがの比較:試料(じゃがいも、にんじん、豚肉)を下処理として炒めた後、通常調理は調味液(試料重量に対して醤油4.6%、塩0.2%、砂糖3.5%、酒3.5%、だし汁90%)と共に鍋で加熱し、真空調理は(1)と同様に加熱を行った。加熱調理後、破断強度測定及び5段階評点法による官能検査を行った。
【結果】
(1)加熱前後の重量変化は、じゃがいもが加熱後に重量が増加しているのに対し、にんじんは減少をしており、これは水に比べ調味液を添加して加熱した方がより顕著であった。(2)破断強度は通常加熱が有意差はないがやや低値を示していた。官能検査では、外観、味、かたさ、総合の全ての項目で真空調理の方が有意に高い評価であった(p<0.05)。