抄録
【目的】
過熱水蒸気調理は脂質酸化防止と脱油効果、栄養成分の保持などの可能性を秘めており、近年の健康志向と相俟って、食品調理に新たな展開を生むものと期待されている。しかし、食品調理における過熱水蒸気の効果は未解明の部分が多い。そこで、本研究では、過熱水蒸気を熱源とした時の、肉類調理時の水分・油分を明らかにすることを目的として、実験的および理論的に検討を行った。
【実験方法】
試料(豚肉と牛肉)を中心温度が75℃になるまで加熱し,加熱中の温度変化を熱電対により測定した。また,加熱前後の試料重量変化より、総重量変化を求め、脱油率は以下のように求めた。加熱時に出てきた油と水分を、試料の下敷いたにペーパータオルに染み込ませる。加熱終了後,24時間乾燥させて水分を蒸発させて染み込んだ油の量を測定し,脱油率を求めた。
【結果と考察】
まず、豚バラ肉を使って脱油率について検討した。脱油率は過熱水蒸気よりもオーブン加熱のほうが大きくなった。これは,豚バラ肉のように脂肪と赤身が分離している場合,肉の内部が同じ温度に到達すると脂が溶け出すためと考えられる。フライパン調理と比較した場合,過熱水蒸気調理のほうが,脱油が大きいと言われている。ここでは,牛ヒレ肉を用いて検証を行った。重量変化に大きな差はなかったが,脱油率は過熱水蒸気のほうが大きかった。これは,フライパンの場合,初期の段階で肉表面が焼き固められ,油が出にくくなったものと考えられる。
肉が加熱されるとタンパク変性によって収縮し、発生する内部圧力によって水分と油が出てくると考えられる。本研究では、これらの現象を数式化し、数値計算を行ったところ、計算結果は実測値を良好に表現できた。