【目的】
固形食品の油脂の酸化を簡便に測定し,その酸化速度を見積もることは油脂が含まれる食品の調理・加工・流通において重要な課題である.本研究では固形食品を試料とし,油脂を抽出することなく,酸化の程度を非破壊測定し,油脂の酸化速度を求めることを目的とした.
【方法】
試料はポテトチップスおよびインスタントラーメンを用い,0~24時間,紫外線を照射し酸化させた.経時的にサンプリング後Carl Zeissの分光装置(波長領域300~1700nm)を用いて近赤外スペクトルの測定を行い,スペクトルRの逆数の対数log(1/R)の2次微分値を求めた.なお,リファレンスは白色セラミック板を用いた.過酸化物価は試料から油を抽出し,滴定法によって求めた.
油脂の酸化速度は酸化速度式dP/dt=k0M+k1MP-2k2P2-k3Pを用いて解析し,各段階の速度定数(k0[hr-1]:開始期の速度定数,k1[(meq/kg)-1hr-1]:進行期の速度定数,k2[(meq/kg)-1hr-1]:重合の速度定数,k3[hr-1]:分解の速度定数)を求めた.
【結果】
滴定法による過酸化物価の測定値と1280nmのスペクトルデータを解析した結果,高い相関関係が得られた.このことから,滴定法で過酸化物価を測定しなくても, 1280nmのスペクトルデータを解析するだけで固形食品を酸化の程度を非破壊で推定することが可能であることが分かった.また抽出したパーム油(インスタントラーメン)とその精製油であるパームオレイン油(ポテトチップス)の酸化速度定数は同程度であった.以上のことから油脂含有固形食品においても酸化速度式を適用できることがわかった.