抄録
【目的】
鹿は家畜が飼育される以前から世界各地で食用とされてきた動物であるが、現在の我が国では限られた地域やレストランで利用されている以外は、鹿を食肉として利用することにはなじみが薄い。近年、北海道東部でエゾ鹿が繁殖しすぎて食害をおよぼすようになったことから、この野生鹿肉を食用とする試みが進められている。一方、長崎県には鹿の生産牧場があり、国内最大数の鹿が飼育されている。しかし、この鹿肉の利用は業務用に限られており、一般には普及していない。そこで、本研究ではこの牧場で飼育された鹿肉について、その特徴を明らかにして広く利用するための方法を検討した。
【方法】
鹿および鹿肉に対するイメージについて女子学生を対象にアンケート調査した。また、鹿肉の特徴を調べ牛肉および豚肉との違いを明らかにすると共に、鹿肉加工品として鹿挽肉でソーセージを作り豚肉で作ったものと比較した。
【結果】
鹿に対するイメージは、奈良、かわいい、怖い、といった答えが多く、鹿肉を食べてみたいか、という質問に対して食べてみたいと答えた女子学生は35_%_と少なかった。しかし、美容や健康に効果があるなら食べたいという答えであった。鹿肉は肉色が赤く外観上は牛肉に近いが、牛肉や豚肉より脂肪が少なく、鉄含有量が多いことから、現代の食生活には適した食肉と考えられた。鹿挽肉で作ったソーセージは豚肉で作ったものより弾力が少なかったが、歯ごたえがあり、豚肉とは異なる味の特徴を持っていた。