抄録
【目的】
米飯の硬軟は、嗜好性や摂食能力に応じて食され、また、粥や重湯は、摂食能力が低下した人の主食として利用されている。本研究では、米飯、粥、重湯の物性測定と官能検査を行い、テクスチャー特性の観点から、各嚥下食レベルに分類し、摂食能力に対応した食事形態を段階的に検討した。
【方法】
魚沼産コシヒカリを用いて米飯、軟飯、全粥、五分粥、重湯、重湯ゼリーを試料とした。加水量は米重量に対し、米飯1.5、軟飯2.5、全粥6.25、五分粥12倍とし、米飯、軟飯は電気炊飯器(National;SR-03F)で、粥は厚手片手鍋で炊いた。重湯は五分粥より調製し、重湯ゼリーは1.3%ゼラチンを添加した。テクスチャー特性値はレオナー(RE2-33005S)を用い、米飯は一定量の集合米飯を測定し、粥は40mmφのシャーレに充填し、20mmφプランジャーで測定した。官能検査は、米飯、軟飯、粥について、検査員19名で7段階評点尺度法で検査した。統計解析はTukeyの多重比較法を使用した。
【結果・考察】
テクスチャー特性について、嚥下食レベルをL0~L4に分類すると、米飯、軟飯は4.0×104(N/m2)以下で、L4であった。全粥、五分粥はL3に、重湯ゼリーはL1に該当した。また、五分粥、重湯ゼリーの付着性は米飯、軟飯、全粥に比して低値を示した(p<0.01)。重湯の粘度は1.5×103(mPa/s)以上であり、咀嚼・嚥下困難者用食品の規格内であった。官能検査では、米飯は適度なかたさや弾力を有し、風味や甘味があり、全粥、五分粥では軟らかく、飲み込みやすいと評価された。以上のことから、米に対する加水量の調整や、重湯をゼリー化することで食事形態の幅が広がると示唆された。