抄録
【目的】
病院や特別養護老人ホームにおいて提供されている食事は、高齢者の咀嚼能力に応じた食事形態が検討されてきており、ソフト食のような食事形態が開発・提供されている。高齢者に対する食事は、テクスチャーと個々人の咀嚼能力から食事形態を分類しているが、高齢者への食事提供を考える上で、高齢者の身体状況や生活状況を含めて検討する必要がある。そこで本研究では、高齢者の喫食状態と提供されている食事のテクスチャーとの関係を検討するために、養護老人施設入所者と在宅高齢者への食事の聞き取りアンケート、テクスチャー測定、咀嚼力判定調査を行い、食事形態について比較検討を試みた。
【方法】
新潟市にある、S施設においてソフト食を喫食しているの入所者72名に対し、提供されている食事の硬さや食嗜好について聞き取り調査を行った。また、聞き取りを行った入所者の中から、同意を得られた54名に対し、(株)ロッテ、キシリトールガム咀嚼力判定用を2分間噛んでもらった後、色の変化から咀嚼力を7段階で判定した。テクスチャー測定には(株)山電製レオナーRE-3305Sを用い、厚生労働省が示す高齢者用試験方法に従って、施設の食事50種について測定を行った。
【結果】
聞き取り調査の結果では、現在食べている食事について、好きな食事に対しては54%が丁度良い硬さと答えており、硬いと答えた人は1%であった。しかし、テクスチャー測定結果からは、測定したソフト食の約半数が、高齢者用食品の硬さ基準よりも高い値となっており、さらに咀嚼判定ガムを用いた咀嚼力調査からは、対象者の53%で咀嚼力が十分ではないという結果だった。このことから、高齢者が食べやすく好ましいと感じる硬さには、高齢者の嗜好も大きく関わっていることが示唆された。