抄録
【目的】
食品は,タンパク質や多糖類など様々な食品成分が混在した系である。タンパク質と多糖類の混合系では,タンパク質が多い部分と多糖類が多い部分に分かれる傾向がみられ,この現象は「相分離現象」と呼ばれる。本研究では,卵白/デンプン混合ゲルの相分離現象について検討した。
【方法】
卵白として乾燥卵白を,デンプンとしてノーマルコーンスターチとワキシーコーンスターチの2種類を使用した。卵白/デンプン混合ゲルは,7%卵白濃度,85℃,30分間の加熱条件で作製した。力学物性測定は圧縮試験,ゲル構造はローダミンBでタンパク質を蛍光標識して共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で観察,離水率は遠心法をおこなった。
【結果】
卵白/デンプン混合ゲルに与えるpHの影響を力学物性測定により調べたところ,pH6以上とpH4以下のpHでは,pH6以上での方がよりデンプンの影響を受けることが示された。CLSMの観察結果から,卵白とデンプンとの間にも相分離現象がおこり,それは凝集型であることがわかった。卵白/デンプンの相分離現象は,デンプン濃度が高くなると強まり,pH6のときに最も強くなった。これらの結果から,卵白/デンプン混合ゲルの相分離現象には,デンプンの量とタンパク質分子の荷電量が強く関係していると推定される。卵白/デンプン混合ゲルは,pH6でデンプン濃度が2%よりも高くなると,タンパク質凝集物のサイズは急に小さくなり,それに対応して力学物性と離水性が低下した。これらの結果から,卵白/デンプン混合ゲルでは,デンプン量の増加はタンパク質凝集物のサイズと網目構造に影響を与え,そのことが力学物性にも影響することがわかった。