抄録
【目的】大麦は3大穀物に次ぐ生産量があるが、食料としての利用は僅かである。これまで麦飯の加水比、物性、混合割合については報告されているが、炊飯による成分変化に関する報告はほとんどない。本研究では加工法、搗精度の異なる同一品種の大麦を試料とし、炊飯過程の温度履歴の違いが麦飯の糖生成量に及ぼす影響について比較検討した。
【方法】試料大麦(押麦・米粒麦・80%搗精丸麦・55%搗精丸麦)に2.2倍加水し、20℃で1時間浸漬後、沸騰まで11分(標準)または45分間、沸騰継続13分間、蒸らし15分間の炊飯を行った。さらに標準炊飯の昇温期に40、60、80℃を15分間保持した計5条件の麦飯から50%エタノールを用いた振とう抽出により麦飯抽出液を調製し、全糖量(フェノール硫酸法)、還元糖量(ソモギー・ネルソン法)、遊離糖(グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース)をキットを用いた酵素法により測定した。
【結果】押麦、米粒麦の炊飯による全糖量の増加に沸騰まで11分および45分間の昇温速度による有意な差はなかったが、80%搗精丸麦、55%搗精丸麦の全糖量は昇温速度が遅くなるほど増加した。押麦、米粒麦、55%搗精丸麦の還元糖量は昇温速度による有意な差はなかったが、80%搗精丸麦の還元糖量は昇温速度が遅くなるほど増加した。昇温期に15分間一定温度保持することで、いずれの試料も全糖量、還元糖量が増加し、特に丸麦では60℃で還元糖量が顕著に増加した。グルコース、フルクトース、スクロース等の遊離糖はいずれの試料でも炊飯により増加したが、昇温速度および昇温期に一定温度保持することによる糖生成量については、糖の種類および増加程度が大麦の搗精度、加工法により異なった。