日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
セッションID: 2E-a1
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口頭発表
加熱・保存条件が大根への塩化ナトリウム,コラーゲン,脂肪の浸透およびテクスチャーに及ぼす影響
ぶり大根をモデルとして (1)
*杉山 寿美三宅 彩矢多田 美香都留 理恵子水馬 義輝
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抄録

【緒言】煮る操作は加熱と調味を目的とし,複数の食材を同時調理することが多い。本研究ではぶり大根をモデルとして,加熱・保存条件によってNaClのみでなく,動物性食品から溶出したコラーゲンや脂肪が植物性食品にどのように浸透していくのか,また,昇温速度の破断強度への影響も検討した。
【方法】ぶりの煮汁(脂肪量1.0%,コラーゲン量0.3%)にNaClを1.0%になるよう添加した。大根は中央部を2cmの輪切りにし,その中央から1辺が2cmの立方体4個を調製した。加熱はハロゲンヒーターを用いてビーカー中で15-90分間行い,5℃,65℃で保存した。加熱・保存後の大根は表面を約1mm切り取り,表面部と内部に分けた。均質定容後,コラーゲン量,脂肪量,NaCl量を測定した。昇温速度の影響は、沸騰までの時間が異なる2条件とし、NaCl量と破断強度を測定した。
【結果】NaClの大根への加熱時の浸透は著しく保存時も浸透した。すなわち加熱時での表面部と内部の濃度差が小さくなった。コラーゲンの加熱時の浸透はわずかで内部へほとんど浸透していなかった。保存時には温度が高く時間が長いほど内部への浸透が認められた。なお,加熱・保存時の煮汁中コラーゲンの低分子化はわずかであった。脂肪の加熱時の浸透は時間につれて多くなるものの,表面部に限られ内部まで浸透しなかった。保存時の浸透もわずかであり,温度の影響も小さかった。昇温速度の影響はNaCl量,破断強度ともに特に加熱初期で顕著であった。さらに本加熱条件下では表面部が内部の破断強度より高く,重量減少も認められることから脱水によって大根表面が収縮したと考えられた。
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© 2009日本調理科学会
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