【目的】これまでにソバ茶浸出液の調製条件を検討し、ルチン含量が高く嗜好性の良好なソバ茶液が得られることを報告した。今回はソバ茶の浸出に適した水質条件を明らかにするために、ミネラル含有量の異なる3種の水を用いて試料液を調製し、ミネラル成分が水色および嗜好性に及ぼす影響について追究した。
【方法】日穀製粉(株)製の普通およびダッタンソバ茶各6gに、沸騰した蒸留水、水道水およびミネラルウォーターを300mLずつ加え4分間蒸らした浸出液を試料とした。各試料の色について、0,12,24時間放置した場合の明度L*,色度a*,b*および色差ΔEを測色色差計により測定した。また、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムの4種のミネラル溶液を用いてソバ茶浸出液を調製し同様に水色を比較した。なお、ミネラル溶液はミネラルウォーターの含有量と同濃度および統一濃度(0.01mol)の2条件で調製した。併せて、嗜好性評価として味、色、香りについて順位法による官能検査を行った。
【結果】蒸留水の水色に対する各ソバ茶浸出液のΔEは、ミネラルウォーター>水道水>蒸留水の順となり、この傾向はダッタンソバ茶で顕著となった。カルシウムとマグネシウム溶液による浸出液はいずれの濃度でもa*が上昇し、b*が低下して緑を帯びた黄色となり、大いに色が変化した。カルシウム、マグネシウム溶液およびミネラルウォーター利用の浸出液は経時的に沈殿物を生じL*が上昇したことから、色素成分ルチンとこれらミネラル成分の相互作用が示唆された。官能検査ではミネラル成分により変化した水色および味が最も好まれないことから、ソバ茶の浸出にはミネラルウォーターは適さないと考えられた。