日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成22年度日本調理科学会大会
セッションID: 2E-p4
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口頭発表
福島県南会津地域でつくられる「水あめ」の食文化
*本間 祐子真鍋 久角野 猛
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抄録
【目 的】「水あめ」は、日本各地で古くから活用されている。福島県内では、特に南会津地域での活用がよく知られており、現在でも高齢者の所帯を中心として、「水あめ」を作る家庭が見られる。演者らは、南会津地域で「水あめ」が現在に至るまで作り続けられてきている理由を地域の特徴を踏まえながら探ることとした。今回は、聞き取り調査のほか、この地域における「水あめ」の作り方、「水あめ」と同じ材料で作られる「甘酒」との甘味生成物の比較、地域に伝わる「水あめ」の利用方法などについても検討したので、併せて報告する。 【方法】「水あめ」の製造実態調査等は、文献検索及び、平成21年度に福島県只見地方等の南会津地域で聞き取り調査により行なった。 【結果】この地域の「水あめ」は調理には利用されず、甘味を楽しむ(なめたり、飲んだりする)ために使われていることがわかった。更に、本地域には、水あめを作ると近所の人達を呼び、煮つめる前の「水あめ」を飲み合いながら世間話をするという「あめよばれ」、「あめよび」の風習が残されていた。また、「水あめ」と同様に「甘酒」もこの地域では古くから作られている。「甘酒」の甘味は、米のでん粉を麹のアミラーゼで糖化させて生じた「ぶどう糖」による。一方、「水あめ」の甘味は、モチ米のでん粉を麦芽アミラーゼにより糖化させて生じた「麦芽糖」であり、穏やかな甘さを呈する。甘味生成物のこのような違いが、南会津地域で「甘酒」以上に「水あめ」を“楽しみ”の中に取り込んだ根拠になっている可能性が高い。「水あめ」には薬用や滋養強壮としての効能があるとされることも、「水あめ」がこの地域で作り続けられている理由の一つと推測される。
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