日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成24年度日本調理科学会大会
セッションID: 1C-a1
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口頭発表
物質移動解析に基づく畜肉加熱時のグルタミン酸変化の予測
*石渡 奈緒美福岡 美香酒井 昇
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抄録
【目的】畜肉を加熱調理すると,タンパク質の熱変性によって,収縮が生じ,それに伴って,離水した水や融解した脂肪などの油分が流出する物質移動現象が起こる.この時,畜肉の主要旨味成分である遊離グルタミン酸(以後,Glu)は,離水した水と共に,系外へ排出されるため,著しい重量損失は品質低下を招くと考えられる.そこで本研究は,伝熱および物質移動解析によって,加熱調理途上における畜肉内の水分およびGlu残存量の変化を予測することを目的とした.
【解析方法】有限要素法による二次元非定常伝熱解析を行った.また,畜肉加熱時の物質移動現象は,加熱変性に伴う収縮により対象物内部に生じる圧力差を駆動力とするダルシーの法則で説明できると考えた.
【実験方法】等温実験より,熱変性度の異なる試料を用意し,以後測定に用いた.ダルシーの法則に必要となる透過係数は,PFG-NMR法により決定した.試料中のGlu残存量は,L-グルタミン酸キット2(ヤマサ)を用いて定量した.
【結果および考察】透過係数ならびにGlu残存量は,筋原線維タンパク質の変性に伴い低下し,特にアクチンが変性すると,著しく低下する傾向であった.そこで,タンパク質変性度と,測定した定量結果の相関式をそれぞれ導出し,物質移動解析に用いた.その結果,試料重量および体積変化の解析値は,実験値と傾向が一致した.またこのことより,実験より算出した透過係数は妥当であると判断した.さらに,調理途上の水分分布とGlu残存量分布の変化をアニメーションで示すことで,水分移動が進行し,その結果生じた水分含量の低い場所から,Glu量が減少する様子を明確に提示することが可能となった.
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© 2012 日本調理科学会
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