抄録
【目的】植物ステロールの脂肪酸エステル(植物ステロールエステル、PSE)は、食用植物油に含まれており、日常的に摂取している成分である。植物ステロールは、コレステロールに類似した構造を持っているが、消化管からは吸収されない。PSEが固形油脂の性状を持っていることに着目し、製パン用あるいはカレールウ用固形油脂の低カロリー代替物として使用した時の食品の食味と物理的性状に与える影響を評価した。
【方法】PSEはタマ生化学製で、ステロールとしてはシトステロールおよびカンペステロールが、脂肪酸としてはリノール酸がそれぞれ主体なものを使用した。製造したパンは、食パン(油脂含量4%)とバターロール(油脂含量18%)であり、ショートニングを対照とし、試験試料は油脂全量をPSEで置換した。パンのレオロジー特性は、山電レオメーターRE-3305を用いて測定した。カレーについては、ラードを比較対照とし、50%あるいは100%をPSEで置換して、風味について官能検査を行った。
【結果】食パンについては、テクスチャー解析および官能検査の両者について、有意差は認められなかった。バターロールでは、PSEで置換すると、ショートニングより凝集性が強くなったが、官能検査ではにおいが好まれなかった。バターロールで両者に差があったのは、パンへの添加量が多いためと推定された。 カレーについては、50%置換では風味に影響が認められなかったが、全量置換すると、PSE独特のにおいが好まれなかった。