抄録
【目的】食材の調理において適切な加熱条件を知ることは重要である。特に、食材を煮る場合、加熱や放熱による容器内での熱流体運動を考慮する必要がある。本研究では、流体で満たされた容器内で煮汁に浸されたジャガイモを下方から加熱した時,上面での放熱条件による煮汁およびジャガイモの温度や硬さ変化の違いを数理モデルと実験により調べる。
【方法】容器内でのジャガイモの配置が大きなスケールを持つ多孔質媒質と仮定し、ポーラスメディア理論を用いた定式化を行う。容器内での温度・速度分布を3次元モデルで、平均温度変化を1次元(集中定数系)モデルで数値的に調べる。加熱は一定熱流束条件を課し、放熱は流出熱流束が温度に比例もしくは断熱の条件を課す。実験では対応する条件としてIHクッキングヒータで加熱し、落としぶたが無い場合とある場合を仮定し、二種類の大きさのジャガイモを具材とした場合について調べる。煮汁や具材内部での温度分布や具材内部での硬さ変化に関する計算結果と実験件結果との比較検討を行う。
【結果】1.ジャガイモが大きい場合、容器内部での場所による温度差は小さい。その場合、実験結果を参考にした適切なパラメータ値を設定することにより、1次元モデルによる煮汁温度やジャガイモの温度、濃度、硬さの変化予測は有効である。2.ジャガイモが小さくなるにつれて、容器内部での場所による温度差が大きくなる。その場合、3次元モデル解析による容器内部での局所的な温度変化が重要になる。3.落としぶたをすることにより、煮汁の平均温度はより大きく上昇するが、容器内での温度差は小さくなる傾向にある。
本研究は科研費(No.22500749)の助成を受けたものである。ここに感謝の意を表する。