抄録
目的】兵庫県では環境創造型農法の一環として「コウノトリ育む農法」を推進している。技術的課題の一つとしても良食味化があげられているが、本農法がコメの食味におよぼす影響については不明であることから、3カ年間コメの食味に関する成分を調査した結果を報告する。【材料および方法】1)調査年度:2009~2011年(3カ年)2)調査ほ場:兵庫県豊岡市・朝来市「コウノトリ育む農法」無農薬栽培、減農薬栽培および慣行ほ場3)品種:コシヒカリ4)調査方法:タイプ別実証ほ場において収穫適期に各ほ場2ヶ所より試料を収穫し、収量構成要素、水分、タンパク質、脂質、灰分、炭水化物、アミロース等を分析した。【結果】灰分、脂質およびアミロースは栽培による差が小さく、タンパク質含有率は差が大きかった。タンパク質含有率が高いコメは炭水化物含有率が低かった。無農薬栽培ほ場は炭水化物収量が少ない傾向がみられた。各栽培タイプの平均タンパク質含有率は無農薬(2009年:6.3%、2010年6.2%、2011年5.9%)、減農薬(2009年:6.2%、2010年6.1%、2011年5.8%)、および慣行(2009年:5.6%、2010年6.1%、2011年6.3%)であり、全体的に含有率は低かった。無農薬と減農薬は3年間の経過として減少傾向であった。タンパク質含有率が6.5%を超えるサンプルの割合は無農薬(2009年23.7%、2010年30.0%、2011年17.7%)は減農薬(2009年18.8%、2010年25.0%、2011年0%)および慣行(2009年0%、2010年33.3%、2011年12.5%)と比べ高く、含有率が7%を超えるサンプルも3年間を通してみられた。各栽培タイプにおいて収量45kg/a以下では平均のタンパク質含有率が高く、7%以上の割合も高かった。また、無農薬タイプにおいては登熟歩合の低下によるタンパク質含有率の増加がみられた。