抄録
【目的】日本では、古来より人生の節目にいくつかの通過儀礼があり、家や地域に伝わる伝統的なしきたりや食事・作法等を伝えてきた。しかし、近年、家族構成が変化し、核家族が増え多世代同居の世帯数は減少、また、冠婚葬祭を扱う業者のサービス内容が充実し、以前は各々が準備したことが委託されるようになり、さらには儀式そのものが簡略化されるなど、大きく様変わりしている。そこで、山形県民は通過儀礼をどの程度認知し、またそれに伴う食事内容の現状について明らかにすることを目的とした。
【方法】平成21~23年度に行った日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」データベースより、東北・北海道支部所属の調査者が入力したデータの中から、山形県在住者を抽出し、調査対象とした。
【結果】山形県在住者は116名で、女性113名、男性3名であった。居住期間については、5年未満34.5%、5年以上~10年未満0.9%、10年以上~20年未満19.0%、20年以上~30年未満25.9%、30年以上19.8%であった。通過儀礼の認知度は、誕生日が最も高く(99.1%)、次に七五三(97.4%)、成人式(96.6%)、葬儀(95.7%)、婚礼(94.0%)の順であった。通過儀礼の経験度は、誕生日(99.1%)、七五三(89.7%)、葬儀(84.5%)、回忌(78.4%)が高かったが、その他の行事はすべて6割未満であった。食経験は誕生日ケーキが最も高く(98.3%)、次に七五三千歳飴であり(85.3%)、反対に低かったのはお七夜と還暦の尾頭付き魚であった。また、対象者を10年以上山形県に在住している75名に絞ると、認知度・経験度・食経験値がほとんどの項目で高くなる傾向が示唆された。