抄録
[目的] 先に日本調理科学会特別研究である「調理文化の地域性と調理科学」-行事食・儀礼食-について,福島県内に居住する学生を対象にして,行事の認知度並びに喫食経験率等を調査し報告をした。その結果,認知・喫食経験ともに最も高率であったのが正月料理である。本報告では,正月料理の嗜好調査及び意識調査を行うとともに,元日から3日間の食事記録を調査することによって,正月料理がどのように食されているかについて実態を明らかにすることを目的とした。
[方法] 女子学生116名を対象として,「正月料理」について,手作り状況ならびに嗜好調査や意識調査をアンケート調査により行った。また留め置き法により,元日から3日間の食事記録を取り,その間に喫食した正月料理の種類と頻度を集計し,結果を分析した。
[結果] 調査対象者は,福島県の中通り地区出身者が最も多く,同居家族数は6~5人の拡大家族が全体の約70%を占めていた。正月料理を「毎年食べる」との回答が,半数を下回る48%,「時々食べる」41%,「食べない」10%等,全体的に低い喫食状況であることがわかった。また,正月料理については,「伝統料理として大切にしたい」,「和食の代表的なものである」の2項目がかろうじて半数を越えたものの,全体的な意識として肯定的とは言い難い。「あまり好きではない」,「作るのが面倒である」,「本来の意味を知らない」と回答した例も約20~30%見られ,学生にとって馴染みの低い料理として捉えられていることが窺える。日本の伝統料理として,「次世代へ引き継ぎたい」との回答も見られ,伝統食・行事食の重要性について,さらに認識を深めるような授業の展開を検討して行きたい。