抄録
【目的】家庭部門のエネルギー消費量においては現在も増加の傾向にあり、省エネルギー余地が大いにある。そこで、家庭内最大の生産プロセスかつ日常生活において必要不可欠な「調理」に注目し、エネルギー消費量およびCO2排出量の評価を目的とする。【方法】水を媒体とする調理のエネルギー消費とCO2排出量の基礎データを得るため、ガスおよびIH設備の選択や、火力の調節などの条件を変え、水が沸騰するまでに要したガス総流量、電力使用量を求め、それらからエネルギー消費量およびCO2排出量を算出した。また、調理対象として卵を用いた加熱過程における卵内部温度の時間変化を調べた。【結果と考察】ガスコンロとIHそれぞれの強弱4種類の火力レベルで比較した結果、水の沸騰実験においては、ガスコンロでは弱火、IHクッキングヒーターでは強による調理が省エネルギーかつ低炭素であることが明らかとなった。さらに、IH弱は他と比べると大きな消費量となった。ガスコンロの強火では鍋底からの熱の逃げが効率に影響することが考えられる。また、IHクッキングヒーターによる調理のエネルギー消費量およびCO2排出量が多い原因としては、火力発電所における発電ロスや家庭までの送電ロスが考えられる。ゆで卵調理においては、ガスコンロとIHクッキングヒーターとのエネルギー消費量およびCO2排出量の差は大きくなった。これは、弱(火)の調理時間が長くなったことが影響している。実際の調理で、状況に合わせて火力の調整を必要とする場合は、ガスコンロを用いた方がエネルギー消費量およびCO2排出量を抑制できることが示唆された。