抄録
【目的】チーズ消費量の増加に伴いレンネットの安定供給が切望されているが,一方食肉資源の立場から仔牛の屠殺数は減少している。そこで,仔牛第4胃由来の動物の代替品として微生物レンネット,遺伝子組み換えレンネットの需要が高まり,現在,日本国内流通量の約40%が微生物由来のレンネットである。優れたレンネットの条件はタンパク質分解活性(Proteolytic Activity:PA)に対し凝乳活性(Milk Clotting Activity:MCA)が高いことが要求される。本研究では,先行研究で土壌から分離した高い凝乳特性を有する菌株を用いて,培地に添加する炭素源が凝乳特性(MCA/PA)に及ぼす影響を検討した。
【方法】培地成分の炭素源としては9種類の糖質を用いた。MCAはBerrige法で,PAは0.6%カゼインを基質とし,溶液の単位時間当たりの660nmの吸光度変化で測定した。
【結果】炭素源としてカルボキシメチルセルロースを用いた場合が最も高いMCA/PA比を有することが判明したが,培養中の菌体収率は低値であった。スクロースの場合は最も生育が良好で菌体重量も高かったがMCA/PA比は低値であった。これらのことから微生物由来の凝乳酵素特性は培地の炭素源の違いに影響され,単糖類より二糖類,少糖類を用いた方が優れた凝乳特性を有する酵素が得られるものと推察された。しかし,菌体重量とMCA/PA比の間には関連性はないものと考えられた。