日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2C-a1
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口頭発表
麺類茹で調理における水分移動へおよぼす流れの影響
*大野 真梨子福岡 美香酒井 昇
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キーワード: 澱粉食品, 水分移動, 流れ
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抄録

【目的】麺類は澱粉食品であり,可食となるためには,水と共に加熱し澱粉を糊化させることが必須である.麺類の茹で調理には茹で水の量や温度の違いが品質に影響を与えることが明らかになっているが,流れの影響を考慮した研究は少ない.本研究では,試料に乾麺パスタを用い,一般的な鍋を使用した茹で調理における流れの有無による麺の吸水特性の違いを検討した.また茹で水への食塩添加の有無についても比較・検討した. 【方法】乾麺 (マ・マースパゲティブルーφ2.2mm,日清製粉(株))を試料に,鍋内において流れの影響が有/無の系を設定し,かつ食塩の添加の有無でそれぞれ茹で調理を行った。調理途上で試料を取り出し,核磁気共鳴画像法(MRI法)による水分分布の測定,重量乾燥法による固形分溶出量の測定,顕微鏡法による澱粉の状態観察を行った. 【結果】MRI測定において,麺内部への水分移動は,鍋内の流れの影響の有無で大きく異なる様子が示された.澱粉は水分が十分に存在する系において糊化・分散・溶出という過程を辿る.分散過程の澱粉は水分を多量に保持することがわかっている.流れありの場合には,この分散過程の澱粉が茹で水の流れによって多く溶出することで,麺の表層部の水分保持能力が低くなり麺内部への水分移動が促進されたと考えられる.一方,流れがない場合には,麺の表層部の分散過程の澱粉があまり溶出しないために麺の表層部の水分保持が高くなる一方で,麺内部への水分移動が遅くなると考えられた.また,茹で水への食塩の添加によって,麺内部に特異的な三段階の吸水傾向が表れることが明らかになった.従って食塩は澱粉の水分保持能力に影響を与えるという事が示唆された.  

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