日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1B-a4
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口頭発表
雑誌『糧友』にみる調理科学の起点に関する研究
*小山田 由実子
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キーワード: 調理科学, 陸軍, 起点
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抄録

【目的】「調理科学」は1947年制定の「家政学部設置基準」において食物学科に設置すべき「専攻課目」の1つとして設定されたことが大学制度上の始まりであると考えられている。しかし、自然科学的実験を通して調理上の諸現象を解明しようとする内容は旧制度の女子高等教育機関の一部で実施されており、また、軍隊における教科書や食品・栄養の専門書の中には明治・大正期から調理理論の形成が見られるとの報告もあることから、調理科学の起点は明確ではない。そこで本研究では陸軍の外郭団体「糧友会」発行の雑誌『糧友』および同会が1939年に設立した食糧学校を対象に調査を行い、そこにみられた調理科学について報告する。

【方法】月刊誌『糧友』(1926~1945年、全228冊)よりタイトルに「調理科学」「調理学」「調理化学」を含む記事を抽出した。また食糧学校の学校史と文集2冊、および「調理科学」の授業担当者の著書も検討することでその授業内容の一端を考察した。

【結果】『糧友』から抽出された「調理科学」等の語句を含む記事は、1926年2件、1934年1件、1936~1937年の13件(連載)、1938年1件、計17件、執筆者別にみると経校実験室1件、町田1件、川島四郎1件、町田喜市郎14件であった。川島四郎と町田喜市郎は陸軍において共に調理科学を研究しており、他の婦人雑誌や料理雑誌にも調理科学の記事を執筆しているほか、食糧学校では1939年の設立時から「調理科学」の授業を担当していた。陸軍は大正末期より調理の科学化を提唱しており、この成果を国民にも普及させる必要から「調理科学」が教育科目となったことが、担当者の回想文から明らかになった。このことから、陸軍における調理科学の起点は大正末期頃であると推察された。
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