日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1B-a3
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口頭発表
近代の食生活におけるジャガイモ料理の特徴-明治期の勧農政策を中心に-
*関本 美貴大橋 きょう子
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キーワード: ジャガイモ, 調理, 食文化
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抄録
【目的】演者らは先に大正末期から昭和初期におけるジャガイモの調理実態を調査し、洋風料理は都市部に散見されるのみで、農村部ではほとんどが和風料理であったこと、組織構造を破壊した多様な料理が見られたことを報告した*)。農村部においては、この背景要因の1つとして国の勧農政策の影響が考えられる。そこで本研究では、明治期の勧農政策におけるジャガイモの位置づけや調理に関する情報を明らかにすることを目的とした。
【方法】勧農政策に関する法令、県史、農商務省沿革略史、農事講和筆記およびこれに準ずる記録書を資料とした。農事講和筆記は、明治中期の農事講習会の内容を筆記したもので、国の農村への働きかけの実態を伝える貴重な資料である。以上より明治中期の勧農政策におけるジャガイモの取扱いについて調査した。
【結果】①明治18年農商務省によって農事巡回教師制度が設置され、中央政府から府県に派遣された講師及び農業熟練者による農事講習会が全国各地で開催された。一講師が全国39府県を巡回した記録もあり、当講習会が新しい農事情報を地方へ広める役割を果たしたと考えられた。②農事講習会での栽培法に関する講話は、米が圧倒的に多くジャガイモはその10分の1程度であった。米の講話で調理法に言及した記録は見られなかったが、ジャガイモでは約半数で調理法が紹介されており、ジャガイモの食品材料としての認知度が十分でなかったことが示唆された。③紹介された調理法は、煮る・焼く・つぶしてもちにする等すべて和風であり、洋風料理は見られなかった。 以上の結果は、前回の実態調査の結果を裏付ける知見の1つと考えられる。(*日本調理科学会平成26年度大会要旨)  
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