日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-61
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ポスター発表
H-FABP遺伝子を用いた鹿児島黒豚の品種判定および消費者の分析型官能試験における品種判別力の検討
*竹下 温子野口 紗希
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抄録


【目的】鹿児島黒豚は在来の島豚に英国のバークシャー種を掛け合わせ、明治時代から100年以上改良を重ねて築きあげた「鹿児島バークシャー」と呼ばれる鹿児島県独自の系統で、脂が美味しいと言われるほど、脂身に特徴を持ち、1990年代にブランド化したが、偽造が後を絶たず問題となってきた。豚の品種判定については、毛色関連遺伝子を用いたPCR-RELP法が主流となっているが、黒毛同士の判別は困難を極めている。そこで本研究では、人の味覚で差のある脂身に注目し、すでに小林らによって4品種の豚の判定法が確立されている、Heart-fatty acid binding protein(H-FABP:細胞内の脂肪酸輸送に関連する)遺伝子を用いて、鹿児島黒豚の解析を行うこと、また人の感覚受容器にて鹿児島黒豚と他の豚の品種識別が本当に可能なのか検討することを目的とした。
【方法】品種判定には、鹿児島黒豚肉から液体窒素粉末法にてDNAを抽出し、既報のH-FAPB遺伝子のPCR-RELP解析法により、鹿児島黒豚と梅山豚の比較検討を行った。また、静岡大学教育学部の学生100名を対象に味覚調査を行い、最も閾値の優れている25名を選出し、白豚、鹿児島黒豚、梅山豚の分析型・嗜好型官能試験を実施した。
【結果】H-FABP遺伝子による品種判定では、他の遺伝子を用いた品種判定と同様に、梅山豚と鹿児島黒豚の黒毛間の品種を区別することはできなかった。次に大学生の分析型官能試験では、肉の色による判別力に有意な差が認められた。よって今後ミオグロビン量を反映するヘマチン含量に関連する遺伝子について黒毛間の品種判定が可能か検討していく必要があると考えられた。また嗜好型官能試験では、普段食べている白豚肉を美味しいと評価する学生が有意に多かった。味覚は学習と複雑に絡み合っており、普段食さない肉質への嗜好性は、普段から食べ慣れている肉質の嗜好性に劣る、つまり美味しさは味覚における学習の幅に影響される可能性が示唆された。よって今後は被験者層を広げ同様の結果が得られるか検討していく。
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