日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1P-38
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ポスター発表
次世代に伝え継ぐ岐阜県の家庭料理(第5報)飛騨地域
長屋 郁子*長野 宏子*堀 光代山澤 和子木村 孝子辻 美智子西脇 泰子坂野 信子山根 沙季横山 真智子
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キーワード: 家庭料理, 伝統, 岐阜県
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抄録

【目的】日本各地にはその自然環境で育まれた食材を利用した日常食及び行事食がある。しかし現代は地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960~1970年頃までに定着した岐阜県飛騨地域の郷土料理について、当地域の生活環境や時代背景とともに聞き書き調査を実施した。
【方法】日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査に参画し、飛騨地域の大野郡白川村(北部)、高山市(中央部)、下呂市萩原町(南部)を調査した。対象者はその地で30年以上居住し家庭の食事作りに携わってきた60~80歳代女性9名である。
【結果】飛騨地域は総面積の9割が森林の山村であり、中心地の高山市はかつての天領地で、住民は誇りをもって暮らしてきた。この生活環境が郷土料理にも反映され、陣屋前で開かれる朝市では現在も地域食材などが売られていた。厳冬の山間地であるため、保存食や、山菜、木の実、朴葉の利用、食材を無駄にしない工夫に特徴がみられた。保存性の高い「塩いか」は、かつて富山の行商人から入手していたが、現在は店で購入し酢の物などに利用されていた。年取りの「塩鰤」や「ねずし」にも、保存のための知恵がみられた。大豆は貴重なたんぱく源であり、「すったて」や「こも豆腐」に利用され、伝統的な人寄りのご馳走であった。春に摘んで保存しておいた姫たけやふきなどの山菜は、ハレの日の煮物などに利用していた。「なつめの甘露煮」は秋に作り、冷凍や瓶詰めにして一年中楽しまれていた。初夏の青朴葉は、「朴葉ずし」などに利用して香りを楽しみ、秋の枯れ朴葉は、「朴葉みそ」に利用されていた。自家製の漬物は現在も日常的に食し、「煮たくもじ」などに二次利用していた。

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