日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2P-54
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ポスター発表
包丁操作における固定の種類による効率性の検討
障害を有する主婦と学生の比較
後藤 葉子*中村 眞理子
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キーワード: 包丁操作, 固定, 障害者
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抄録

【目的】
 片麻痺患者にとって,調理は片手での食材固定が難しいことから包丁操作の安定性の低さが問題となる.臨床上,固定の役割を自助具使用で代償する方法を取ることが多いが,実際の在宅では固定道具の使用が定着しない場合が多い.本研究は,片手包丁操作における食材の固定方法の違いによる効率性(可食率,調理時間)と作業に対する主観的評価(VAS)検討した.
【方法】
 脳卒中による障害はあるが,包丁操作には問題がない主婦2名(主婦暦20年以上)と,調理経験の少ない女子学生12名による利き手のみでのジャガイモの皮むきを,①半分に切った面をまな板に伏せ,固定道具を使用せず固定,②セルクル(底のない円柱の型)をジャガイモの下に敷き固定の2課題で実施し,各課題の可食率と所要時間,終了時の主観的評価(VAS)をおこなった.また,主婦では,日常おこなっている両手での丸ごと1個の皮をむきの場合との比較も実施した.
【結果】
 所要時間は主婦の方が学生より短かった.しかし,主婦間および学生間の所要時間,可食率に①②で差はなかった.終了時のVAS(満足度,遂行度,難易度,時間)の結果は,学生では満足度,遂行度,時間で②の方が高く,難易度のみ①の方が高いという結果だった.一方,主婦の場合は4項目すべて①の方が高かった.主婦による両手での丸ごと1個の皮をむきと①②の比較では,可食率に差はなかったが,所要時間は①②では約4倍の時間を要した.
【結論】
 調理経験の少ない学生では,固定道具を使用した方が主観的評価は高いが,主婦の場合は普段使用している包丁の方がやりやすさを感じていた.障害者の在宅に向けての調理訓練においては,対象者の包丁操作能力,調理の経験値を十分考慮することが重要である.

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