日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2P-55
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ポスター発表
包丁操作における固定の種類による効率性の検討
中村 眞理子*後藤 葉子
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キーワード: 自助具, 片麻痺, 包丁操作
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抄録

【目的】
 片麻痺患者では包丁操作での固定が困難なため,自助具を用いることが多い.しかし,実際には使い勝手の悪さなどから調理動作自体が定着しないという報告がある.今回、調理動作の定着への手がかりを得ることを目的に食材の固定状況が異なる4課題で効率性(可食率,調理時間)と作業に対する主観的評価を実施し検討した.
【方法】 
 対象者は,同意を得た右利き健康成人女性 12名(21.25±0.45歳).利き手によるジャガ芋の皮剥を①まるごと②半分(半分に切ってふせる)③釘付きまな板(まるごとの状態で,釘付きまな板を使用して皮を剥く)④セルクル(まるごとの状態の下にリング状の器具であるセルクルを敷く)の4課題で実施した.測定は固定における効率性の指標として可食率と所要時間の計測,終了時に自由記載アンケートとVASを行った.
【結果】
 所要時間は固定道具を用いた方が短縮された(①③,①④(p<0.01)).可食率は固定の有無や種類による違いはなかった.一方,VAS満足度は半分の満足度が高く(満足度①②(P<0.05)),まるごとと固定道具を用いた場合は満足度が低かった.アンケートでは,セルクルの扱いやすさ,下面が剥きやすいという回答が得られた.
【結論】
 固定道具を用いた方が時間は短縮されるが,満足度は低いことが確認された.可食率は差が認められないが所要時間から実用的な時間での制限を設けた場合は可食率に変化があることが予測され,実用的な調理動作の定着には,時間と可食率の双方を考慮する必要性が示唆された.また,調理活動の定着には衛生面や本人と家族の道具の共用を踏まえたユニバーサルな視点での自助具が望まれ,満足感や充足度に影響を与えていると推測された.

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