日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2C-1
会議情報

口頭発表
江戸時代の保存食「さつま砂糖漬け鯛」製造法に関する研究
福田 翼*内山 晃一*辰野 竜平古下 学前田 俊道
著者情報
キーワード: 伝統食品, 発酵, 砂糖漬け
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】さつま砂糖漬け鯛は、江戸時代の料理集「鯛百珍料理秘密箱」(1785年)に記載されている薩摩地方の保存食である。さつま砂糖漬け鯛は、三年味噌への漬け込みと味噌漬けした鯛の砂糖への漬け込みの二段階により製造される。さらに、文中には「風を通さなければ長期保存が可能である」と記され、発酵が寄与しているものと推測される。日本における伝統食品の場合、炭素源として米や麦などを用いるが、砂糖を利用する例はない。本発表では、味噌の種類がさつま砂糖漬け鯛の保存性や風味に及ぼす影響を調査した。
【方法】さつま砂糖漬け鯛は、「鯛百珍料理秘密箱」を参考にして製造した。すなわち、まず、三枚におろしたマダイに魚肉重量に対して5%の食塩を添加し、4°Cで一昼夜干した。干した魚肉を1 cm程度に切断した後、滅菌ガーゼに包み、味噌に漬け込んだ(4°C、48時間)。味噌は、三年味噌、オートクレーブ処理(110°C・20分)三年味噌、現代の味噌製造法である速醸系味噌を用いた。味噌漬けにした魚肉を滅菌ガラス容器に入れ、魚肉重量に対して20%の砂糖を添加し、容器を密封後、20°Cで3ヶ月目まで発酵させた。
【結果】発酵期間中の一般生菌数は、三年味噌および速醸系味噌では初発菌数である103~104 CFU/g程度で推移していた。一方、オートクレーブ処理三年味噌および味噌無添加の場合、発酵1ヶ月目には107 CFU/gまで達していた。発酵期間中のpHは、味噌の種類による差はなかった。有機酸を分析した結果、全ての試料において主要成分は乳酸であった。発酵期間中の魚肉の硬さは、三年味噌および速醸系味噌はオートクレーブ処理味噌および味噌無添加よりも増した。発酵2ヶ月目の試料を用いて官能評価を行った結果、三年味噌および速醸系味噌の方がオートクレーブ処理味噌や味噌無添加の場合よりも嗜好性評価が高かった。
著者関連情報
© 2017 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top