抄録
【目的】北海道、関東および九州の郷土料理に3地域のしょうゆを使って、しょうゆが郷土料理の嗜好性および食後の印象に影響をもたらすかを調べた。しょうゆと郷土料理に相性があるか、あるとすればどれくらいの年齢からかを明らかにすることを目的とした。
【方法】試料は郷土料理を熊本の「だご汁」、3地域共通の料理を冷奴とした。しょうゆは3地域でよく使用されている、北海道(A・B)、関東(A・B)、九州(A・B)を用い、大学生は全6種、他の年代は北海道A、関東A、九州A・Bで試験した。パネルは、熊本在住の幼児、小学生、中学生、大学生、成人および高齢者の女性50名程度とした。官能評価は香り、色、味の嗜好性、食べた後の印象(普段の味か、ほっとするか、懐かしいか等)について9段階あるいは7段階評点法によった。検定はWilcoxonの符号順位検定(p<0.05)によった。選抜パネルによる分析型評価も行った。
【結果】だご汁の香り、色はいずれの年代にも有意に好まれた。だご汁の味は北海道Aのみ中学生と大学生が有意に好まなかった。「普段の味」と違うと、幼児は関東A・九州A、小学生と成人は九州B以外、中学生は北海道A・九州A、大学生は北海道A・関東A・九州ABを評価した。中学生は九州Bを、高齢者は関東Aを「ほっとする」と評価した。また高齢者が九州Bを「懐かしい」とし、大学生は北海道Aと九州Aを「懐かしい」に当てはまらないとした。冷奴はだご汁よりしょうゆの嗜好がみられた。中学生から郷土のしょうゆへの嗜好が現れる傾向であり、高齢になるほど郷土のしょうゆに嗜好が限定されなくなる傾向がみられた。中学生、大学生において郷土料理としょうゆの相性がいくらか認められた。