抄録
【目的】鶏卵の品質は、鶏の週齢、鶏の環境、鶏に与える飼料に影響される。例えば、飼料により、卵の卵殻質の改善、卵黄の色、産卵率や卵の鮮度保持、卵黄の脂肪酸組成にも影響する。しかし、鶏の週齢の違いと卵の調理特性の研究報告は見当たらない。そこで、週齢により調理特性に違いがあるのかどうかを、同じ飼料を給与したボリスブラウン鶏種(赤玉R)とジュリア鶏種(白玉W)の30週齢、70週齢鶏の産んだ卵を用いて比較した。
【方法】両卵の生卵の卵質と重量、卵殻厚、pH、卵黄の粘度、成分、およびその加熱(全熟)卵のテクスチャー測定および官能評価を行った。加熱卵の卵白のかたさは卵の鋭端部を厚さ15mmに切り、その最上部を3mmのプランジャーで貫入した。また、卵黄は卵白から外し、丸ごとの形でくさび型のプランジャーにより山電レオナーで測定した。組織構造を観察し、卵料理を調製して官能評価を行った。
【結果】生卵の重量は、両卵ともに30週齢よりも70週齢の方が重かった。W卵は部位別重量比に週齢による違いはなかったが、R卵では、70週齢で卵白割合が低下した。卵殻厚は両卵ともに、週齢による差はなかったが、卵殻強度は、R卵で30週齢の方が70週齢より高かった。生卵黄の粘度は、W卵で30週齢、R卵では70週齢の方が高い値であった。
加熱卵の卵白のかたさは両卵ともに70週齢の方がやわらかく、水分含有率が影響したと考える。卵黄のかたさは両卵共に70週齢の破断応力が増加した。加熱卵の官能評価においてR卵の70週齢では、おいしいと評価された。これらのことから、鶏の週齢の違いが卵の調理特性に与える影響があることがわかった。また、この影響が鶏種により異なった。