日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成29年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1B-4
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口頭発表
イチゴジャムの風味に及ぼすテクスチャーの影響
黒飛 知香*干野 隆芳*風見 由香利早川 文代羽倉 義雄
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抄録

【目的】ジャムの製品受容性に欠かせないテクスチャーは,ペクチンの種類や濃度によって大きく変化する.これまでに,官能評価によるジャムのかたさ,なめらかさ,口どけ等の項目が見かけ粘度と高い相関を示し,口腔内の状態(ずり速度)を調節しながら知覚していることを報告した.本研究では,ジャムの風味に及ぼすテクスチャーの影響について検討した.
【方法】試料は,イチゴ(45%),糖類(44%),クエン酸(0.25%)にゲル強度がほぼ同程度である市販LMペクチン4種(A~D)をそれぞれ0.4,0.6,0.8%添加・調製した合計12種類とした.官能評価には,訓練パネル(n=13)を用い,3項目(甘味・酸味・イチゴの香り)のImax(最大強度)についてTime-Intensity(TI)法で評価した.物性測定では,動的粘弾性測定法,ショートバックエクストルージョン(SBE)法,ラインスプレッド(LST)法およびリングろ紙法により定量的な評価を行った.また、SBE法では,20℃および29.3℃(人工唾液なし・あり)の3条件において測定を行った.相関分析および重回帰分析を用い,官能評価値と物性値との相互関連性から風味に寄与する因子を把握した.
【結果】酸味は動的粘弾性による20℃の降伏値(ゲル→ゾル)と高い相関(r=-0.84)を示したことから,ゲル構造からゾル状態へ変化させる降伏値の強弱が酸味の強度に大きく影響しているものと推測した.一方,甘味は,29.3℃(人工唾液あり)条件における見かけ粘度(ずり速度0.01[1/s])との関連性が高く(r=-0.72),喫食直後の唾液と混合した際の見かけ粘度が甘味強度に影響していると推察した.イチゴの香りは,29.3℃(人工唾液あり)条件での見かけ粘度(ずり速度13.6)と高い相関(r=-0.93)を示したことから,飲み込む直前の見かけ粘度の影響が大きいと推測した.さらに,重回帰分析よりイチゴの香りには離水の寄与率も高いことが明らかとなった.

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