抄録
【目的】小学校家庭科で学習する米飯の調理では,教科書に鍋炊飯の手順が記載されている。近畿と関東の小学校を対象に行った調査によると,炊飯実習にガラス鍋を使用している学校が多かった。教員が炊飯実習の加熱過程で困ることは,「火加減の指導」と「焦げること」であった1)。本研究では,小学校教員を志望する大学生を対象に,2社の教科書(A・B)における鍋炊飯の加熱過程の記載への理解や炊飯の難易の感じ方について検討した。
【方法】平成29年12月に,大学生54名を調理頻度や炊飯の経験を基に2群(A・B)に分けた。鍋炊飯の4段階の加熱過程(「温度上昇期」,「沸騰期」,「蒸し煮期」,「蒸らし期」)に関する記載を読ませた後,質問紙調査を行った。
【結果と考察】加熱過程全体の「火加減の調節」は,A,Bとも「簡単」と答えた学生が多かった。「加熱時間の調整」は,Bは「簡単」,Aは「難しい」と感じた学生が多かった。加熱時間の記載に幅があることが影響していた。文化鍋の写真が併記されたAでは,「中が見えない」ことも難しい理由の一つであった。「炊飯の状態の判断」は,「ふっとう」という表現を用いた「温度上昇期」が最も易しく,「水が引く」という表現を用いた「蒸し煮期」を最も難しく感じていた。学生の大半は「炊飯の状態」を基準に,火加減の調節をすると答えたが,教科書の記載で最も判断に困ったものも,「炊飯の状態」であった。鍋炊飯を自分で行うことは約7割の学生が簡単だと回答したが,「児童に実習指導を行うこと」は,「児童の経験不足」,「授業運営の難しさ」,「学生の経験不足」の因子が加わり,約9割の学生が難しいと考えていた。
1) 三浦ら(2015),日本調理科学会平成27年度大会