抄録
【目的】総菜類やカット野菜等の普及と共に、家庭内での調理時間が減少し、子どもたちの包丁技能の習得機会も減っている。本研究では、小学校中学年を対象に包丁技能の習得のための効果的な指導方法を検討することを目的とした。
【方法】調理に用いる19種類の切り方を、包丁・添え手の動きから6つに分類し、難易度順に整理した。その中から、動作に特徴がある「皮むき」「せん切り・薄切り」「みじん切り」を抽出した。ペティナイフを包丁に、皮むきは発泡スチロール玉に面ファスナーをつけたもの、せん切りは紙粘土、みじん切りはストローを食材に見立てて教材とした。児童17名に対して、教材での練習後に包丁を使用した指導を行い、児童の様子の観察と簡単な質問紙調査から、効果を把握した。
【結果】皮むきの要点は、「刃元から刃を入れる」「食材を添え手で回す」「親指を刃より前に出す」であり、教材で練習したことで包丁に対する恐怖心が克服できた。せん切り・薄切りの要点は、「包丁の腹に添え手の指を当てて厚みの調節をする」であり、同一食材(りんご)を大量に切った場合と、固さの異なる複数食材(ハム、しいたけ、キャベツ、大根、にんじん、きゅうり)を切った場合とを比較した結果、同一食材を大量に切った方が効果大と考えられた。みじん切りの要点は、「包丁の腹に指を当てる」に加えて「食材を添え手でしっかり押さえる」であった。いずれの切り方も教材の使用と要点の明確化によって児童の包丁技能は向上すると考えられた。