抄録
【目的】外食や内食の増加にともない家庭内調理は減少傾向にあるが、経済性や栄養面を考慮すると、家庭内調理の意義は高いと考えられる。家庭内調理の実践を困難にする要因はさまざまであるが、一人暮らしの大学生においては、居住するキッチンの状況も影響をおよぼしていると考えられる。本研究では、一人暮らしをしている学生を対象にアンケート調査を行い、キッチンの状況と調理の実施状況との関連を調べた。
【方法】本学食生活健康学科学生のうち一人暮らしをしている学生に、2018年2月にコンロの数、調理スペースや流しの広さなどのキッチンの状況、作る料理の数や種類、頻度などの調理の実践状況、一人暮らしの期間などを質問した。
【結果】調査対象の学生の一人暮らし年数は2年目が30.6%、3年目が25%、4年目が38.9%であった。コンロの口数は、年数が短い学生の場合ほど二口コンロより一口コンロの割合が高く、近年の単身用住居のキッチンスペースは狭くなってきているのではないかと推察された。キッチンに対する不満として、最も多く挙げられたのが、調理スペースが狭いことで、72%の学生が不満として挙げていた。また、流しの狭さに対する不満はコンロが一口の場合に多く、コンロの数、調理スペース、流しの広さといった一連の調理作業スペースが狭く、調理を行うのに不便な状況であることがうかがえた。しかし、89%の学生が、キッチンが使いやすい状態であれば、もっと調理するようになるだろう、と考えていた。夕食に作る料理の品数は、どの学生も一品より二品作る頻度が高かったが、作る料理はサラダが最も多く、次いで炒め物であった。調理に要する時間は、一人暮らし年数が長いほど短かったが、コンロの数の影響は見られなかった。