抄録
【目的】近年、限りある資源を大切にして上手に使うことが重要視され、省エネへの関心が高まってきている。そこで、本研究では、省エネ行動の1つである節水に焦点を当て、調理や食事摂取に関わる「食器洗浄」について、洗剤の種類や使用量、すすぎの水の量から、節水に有効な洗浄方法を見出すべく検討を進めることとした。さらに、これまでの研究から、効果的な食器洗浄法を学習することで、学生の節水意識が高まることが示唆されたことから簡易に取り組める実験教材の開発を試み、その効果を実地検証することとした。
【方法】食器洗浄を想定し、新渡戸文化短期大学2年生65名を対象にした食器洗浄実験を実施した。食器汚れはカレーライスを食べた後を想定し、モデル実験系としてターメリックパウダーを食用油脂に溶解したものをプラスチックカップに一定量塗布し、洗浄対象試料とした。このカップの油汚れを洗浄前に拭き取った場合と拭き取らなかった場合について、それぞれ希釈洗剤を使用してスポンジでこすり洗いをし、すすぎまで行う過程で使用した水量を比較した。また、実験後にアンケートを行い、意識変容の効果を検証した。
【結果】拭き取ってから洗浄を行うことで水の使用量が少なくなった者は52名(約87%)となった。アンケート結果では,普段の生活で省エネが徹底するように生活を変えたいと考える者が、61名(約94%)となり、この実験の経験が省エネ行動を考えるきっかけとなり、理解や納得を促進する上で効果を数値化し、自分たちで確認することの有効性が示唆された。本件では実験教材として活用できる手法の開発を試みたが、いくつか課題が認められたため、教員がより的確かつ効率的に指導できるよう改善を図る予定である。