日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成30年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2A-9
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口頭発表
鰹節だしのキレート活性に関する研究
*今村 聡美三ッ石 純子上野 友哉松田 秀喜
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抄録

【目的】鰹節は、日本古来の伝統的な調味料であり、その独特の香気成分や抗酸化作用などの機能性といった様々な研究が行われている。一方、卵を調理する際、アミノ酸由来の硫化水素と鉄が反応することにより硫化鉄を生じ、変色(緑変)することが知られている1)。硫化水素が発生しにくいようにpHを下げるなどの方法で緑変の発生を抑えられるが、風味への影響が大きいという課題がある。我々は、鰹節だしを添加し卵焼きを調理すると、緑変を抑制する効果を見出した。この効果をもたらす作用として鰹節だしと鉄イオンの相互作用が推測されるが、これまでに報告はない。そこで本研究では、鰹節だしの鉄イオンキレート活性を調査することとした。
【方法】鰹荒節を熱水抽出したものを鰹節だしとして試験サンプルに用いた。鷲野らにより、ポーラスポリマー樹脂を用いると、香気成分と呈味成分が精度よく分離できることが報告されている2) 。キレート活性に寄与する成分を推定するため、同様に試験サンプルをポーラスポリマー樹脂に供し、吸着画分(香気成分)と非吸着画分(呈味成分)に粗分画した。キレート活性はフェロジン法により測定した。すなわち、試験サンプルと鉄イオンを60分間反応させた後にフェロジンを添加した。10分間静置し、フェロジン-鉄錯体の可視部の呈色を測定することで鉄残存率を計算し、鉄イオンキレート活性とした。
【結果】鰹節だしにおいて、濃度依存的にキレート活性がみられた。さらに、ポーラスポリマー分画物において、主に非吸着画分にキレート活性が確認された。
1)浅野悠輔, 石原良三(1985),「卵‐その化学と加工技術-」, ㈱光琳, 東京, pp.90
2)鷲野由紀, 久保田紀久枝, 小林彰夫(1989), 日本家政学会誌, 40, 265-270

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