主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
開催地: 武庫川女子大学
開催日: 2018/08/30 - 2018/08/31
【目的】近年、複数のエネルギーを組み合わせて微振動を起こさせながら急速冷凍させる冷凍技術(CAS冷凍)が開発され、話題を集めている。我々は、通常の冷凍とCAS冷凍にて冷凍保存したアサリの呈味成分量の変化を検討し、保存2週間までは冷凍方法や保存期間の違いによる食味への影響が少ないことを報告した1)。本研究では、テクスチャー特性や官能評価の面から、冷凍方法の違いが冷凍アサリの品質に及ぼす影響について検討した。
【方法】冷凍は、CAS機能付き急速冷凍庫(-40℃)、急速冷凍庫(-40℃)および家庭用冷凍庫(-20℃)にて行った。冷凍アサリの品質は、生試料を冷凍した「冷凍」、生試料を加熱後に冷凍した「加熱冷凍」、生試料を冷凍後に加熱した「冷凍加熱」の3条件で比較した。20時間の低温解凍後もしくは5分間の加熱後にドリップ量を測定した。また、調製した試料について遊離アミノ酸含量、テクスチャー特性を測定した。さらに、女子大生34名を対象に冷凍直後に酒蒸し調理したアサリについて、7段階評点法による官能評価を実施した。
【結果】ドリップ量は「冷凍加熱」においてCAS冷凍で低値を示し、重量減少率も低かった。遊離アミノ酸量は、「冷凍」より「冷凍加熱」で多く、いずれの条件もCAS冷凍が一番多かった。テクスチャー特性では緩慢冷凍でやや硬い傾向を示した。官能評価では、味の項目で緩慢冷凍に比べ急速冷凍およびCAS冷凍の方が貝の味が濃いと回答した者が有意に多く(p<0.05)、嗜好性ではCAS冷凍が一番好まれた。以上の結果より、CAS冷凍は水分を保持しやすいことで旨味成分の溶出が抑えられ、調理後も貝の味が濃く、嗜好面で好まれたと考えられた。
1)橋本ら:日本調理科学会平成26年度大会要旨集,p.95 (2014)