日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 2B-10
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口頭発表
加熱温度と調理時間でつくり出すジビエ肉の美味しさ
*秋元 真一郎迫井 千晶五領田 小百合山田 研
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抄録

【目的】我々は2017年度より,日本ジビエ振興協会とともに農林水産省の鳥獣利活用推進事業の一環として,プロ向けジビエ料理セミナーを実施している。野生鳥獣肉の消費拡大のためには,料理人による安全でおいしいジビエ料理の普及が不可欠だからである。2018年10月厚生労働省HPに掲載された「野生鳥獣肉のQ&A」において,食肉による食中毒防止のために必要とされる中心温度75℃1分間(以下温度はすべて中心温度)と同等とされる加熱条件が公開された。このより低い温度×時間で調理したシカ肉のおいしさを評価することで,75℃1分では実現できなかったジビエのおいしさの可能性を検証した。

【方法】75℃1分,68℃5分,65℃15分で加熱した肉について,理化学的な測定により旨味成分,旨味強度,テクスチャー,圧搾肉汁率の各項目の数値データを得た。また本校西洋料理教員をパネルとして官能検査を行い,ジューシー感,やわらかさ,うまみ,臭み,色などを評価し,上記の理化学的な測定値と合わせて総合的なシカ肉のおいしさの評価を行った。

【結果および考察】テクスチャーについては低温であるほどやわらかいと評価されたが,旨味成分や旨味強度においては同様の温度との相関は見られなかった。また,官能検査においても75℃1分と比べれば,より低い温度の加熱条件で調理した方がおいしいと評価されたが,これ以外の加熱条件では同様の結果にはならなかった。その理由としては,たんぱく質の熱変性には温度だけでなく時間も関係すること,人のうまみの感じ方が咀嚼によって変わることなども考えられる。ジビエ肉の安全でおいしい加熱法の確立には,加熱条件や官能検査条件をさらに精緻化して検証を継続する必要がある。

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