主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2019年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 中村学園大学
開催日: 2019/08/26 - 2019/08/27
【目的】私たちは普段ものを口にするとき,色・つやと言った視覚的な判断とともに,匂い・香りなど嗅覚によって安全性を確認している。また,これらは食品の美味しさをもたらす重要な要素とも言える。本研究では鶏肉の焼き調理を対象として,焼成途上の表面温度,焼き色の変化から焼成段階の指標を定め,その指標をもとに香気成分分析を行った。各焼成段階の香気成分の特徴を捉え,焼き色と関連付けて評価した。
【方法】鶏ささみ肉を所定の大きさに切り,上火式電気魚焼き器で焼成した。この時,デジタルカメラで試料表面の焼き色の変化を,赤外線サーモグラフィーで表面温度の変化を30秒ごとに記録した。焼き色の画像のRGB値をL*a*b*値へ変換し,この値から試料の焼け具合を評価した。焼き色の結果から焼成段階を特定し,GCMSを用いて生試料とともに焼成段階ごとの香気成分分析を行った。また,人間の鼻の感覚を模した匂い識別装置を用いて匂い全体を評価した。
【結果および考察】焼き色を指標として焼成過程は,タンパク質変性期,褐変反応期,炭化反応期に分けられた。生および各焼成段階における試料の香気成分を分析したところ,生ではごく微量であったヘキサナールがタンパク質変性試料で急激に増加していることが確認できた。さらに焼成が進み褐変の範囲が広がるにつれてヘキサナールは減少し,ヘプタナールやピロールなど検出される香気成分が増え,匂いがより複雑に混ざり合っていることが示された。また匂い識別装置の結果から焼成が進むにつれて有機酸系,アルデヒド系の匂いが強く感じられることが分かった。GCMSの定量結果と匂い識別装置の結果を照らし合わせ,焼き加減ごとの香りに直接関わる成分を特定した。