【目的】戦後の混乱が収束して高度経済成長に向かった時期に,衣食住等の家庭生活に啓蒙的な役割を担ったものの一つとして,NHKラジオ講座「女性教室」(1950〜1965年)に着目し,食生活に関わる一部分について2018年と2019年の日本調理科学会大会で報告した。本報では,「女性教室」のうち,美容をテーマした講座を対象として,美容のために推奨されていた食生活を調査した。
【方法】180ケ月にわたる「女性教室」の月次テーマを調べ,美容を月次テーマにした講座を選出した。選出した7ケ月分について,新聞の番組欄をもとに各日の放送内容を調べた。また,月次テキストの入手を試み,購入または閲覧できた6ケ月分について内容を調査した。さらに,それらと同時期に刊行された図書・雑誌の中から,“美容と食事”に関連するものを調べた。
【結果・考察】(1)月次タイトルに“美容”という語が含まれていたのは,次の7ケ月であった。a.美容講座(1952年7月),b.家庭で出来る全身の美容(1956年7月),c.三十歳からの美容(1958年10月),d.24時間の美容(1960年5月),e.美容(1962年10月),f.夏の美容(1963年7月),g.美容(1964年10月)。(2)上記7ケ月のうち, b〜fの6ケ月について,月次テキストを調査できた。(3)上記b〜fの月次テキストにおいて, 美容に関する要素として,髪や肌の手入れ・化粧法・体操などとともに,食生活や栄養摂取の重要性を紹介する項目が見られた。(4) 1950年代から注目され図書や雑誌で紹介されていた“ハウザー食”と同様に,若返りや長寿のための食事などが推奨されていた。