主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2021年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 実践女子大学 日野キャンパス
開催日: 2021/09/07 - 2021/09/08
【目的】鶏卵は様々な食品に原料として使用されている。これは鶏卵が持つ物性改良機能が食品をおいしくするためである。卵、特に卵黄の風味がおいしさを増強させることも重要な理由である。しかし、卵黄のおいしさが関与する成分は特定されていない。そこで卵黄を分画し、それぞれの分画成分がどのような風味の特徴を有するのかを明らかにする。
【方法】卵黄に蒸留水を加えて遠心分離し、沈殿したHDLを主とするグラニュール画分を得た。上清のプラズマ画分をさらに冷凍することにより、LDL画分を分離し、残りを水溶画分とした。それぞれの3画分の成分を凍結乾燥した。卵白のみと卵白に3画分を加えた炒り卵を4種、それに生卵黄の添加量を変えて加えたもの2種の計6種を調製した。炒り卵は、サラダ油は3%,塩は0.3%用いた。官能評価に用いた用語は、事前に予備実験を行い、卵黄の風味を表す調査用語を12用語抽出した。専門パネラー10名により、6種の試料について、5段階評点法による分析型官能評価を行った。試料は、一人当たり常温で喫食量20gとした。得られた結果について主成分分析で解析した。
【結果】いりたまごに用いた用語は 「硬さ」、 「弾力」、 「もそもそ(残る感じの強さ)」、 「ざらつき」、 「水っぽさ」、 「硫黄臭」 、「魚臭」、「塩味」、「苦味」、「うま味」、 「コク(味の濃さ)」、 「油脂感」とした。その結果、LDL画分試料と卵黄を多く含んでいる2種試料で「うま味」、「コク(味の濃さ)」、「油脂感」が「強い」と評価された。水溶画分試料では、「塩味」や「苦味」が強いと評価された。これらのことから、LDL画分成分が、卵黄のコクなどのおいしさに関連することが明らかになった。