日本調理科学会大会研究発表要旨集
2021年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2B-14
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口頭発表
植物油の原料の違いが揚げ物の風味に及ぼす影響
*稲垣 瑠奈中野 優子風見 由香利神保 聡子高橋 美奈子浦田 貴之佐藤 瑶子早川 文代
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抄録

【目的】油脂の風味は油脂を用いた調理品の品質に大きく影響する。既報にて,植物油は原料や加熱時間の違いにより風味の質,強度,持続時間が異なることが示されたが,油の風味の特徴が,実際の揚げ調理においてどのように感じられるかの研究は少ない。そこで本研究では,揚げ調理のモデルとして食パンを用い,原料及び加熱時間の異なる植物油が揚げ物の風味に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】4種の植物油(こめ油,なたね油,パーム油,大豆油)を,180℃で0時間,5時間加熱した合計8種類を揚げ油とした。家庭用電気フライヤーで1.5 cm×2 cm×2 cm角の食パンを揚げ,試料とした。訓練パネル12名が,風味に関する10項目について,口中で風味評価を行った。評価には経時的に感じられた項目全てを選択するTemporal Check‐All‐That‐Apply(TCATA)法を用いた。咀嚼は評価開始5秒後,嚥下は30秒後とし,評価時間は180秒とした。

【結果・考察】いずれの油で揚げた試料でも「香ばしい」は口に入れた直後から選択され30~60秒後には低下した。「胸焼け臭」は嚥下以降に選択比率が高くなる傾向にあった。5時間加熱油では,こめ油は,他の油に比べ,「甘い香り」が評価時間全体を通して,「香ばしい」は評価後半で有意に選択され,甘さと香ばしさの持続が特徴的だった。なたね油は,「魚」の臭いが特徴的であり,0時間加熱油では咀嚼開始から嚥下前後で,5時間加熱油では全体を通し選択比率が高かった。5時間加熱パーム油では,評価全体を通し,有意に「ペンキ」の選択比率が高く,加熱によりペンキ臭が強くなることが示唆された。以上のように揚げ油の原料,加熱時間の違いにより,各々の試料の風味に異なる特徴が確認できた。

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