日本調理科学会大会研究発表要旨集
2021年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-2
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ポスター発表
パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)の菌株の種類がパンの製造に及ぼす影響
−白神こだま酵母・とかち野酵母・サフ酵母の比較−
*千 裕美浦原 麻紀熊谷 亜里紗
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抄録

【目的】パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)の菌株の種類は様々あるが、国内で単離した乾燥天然酵母の比較を行った研究は少ない。そこで本研究では、白神こだま酵母、とかち野酵母に着目し、外国(フランス)産酵母であるサフと発酵力、膨化力、食味について比較し、それらの特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】発酵力試験は、酵母1g、10%砂糖液25mLを35℃、55℃、75℃の温度帯で反応させ、発生する気体を水上置換で捕獲し、体積を計量することで行った。膨化力は、所定の方法で製造したテーブルロールの重量と体積(菜種法)を測定し、比容積を求めることで測定した。食味は、製造したテーブルロールを評点法を用いて官能評価を行う(n=17)ことで評価した。

【結果・考察】最も汎用的な発酵温度である35℃における発酵力を3つの酵母で比較すると、サフ酵母が時間経過を問わず最も大きく、とかち野酵母が次に大きく、白神こだま酵母が最も低かった。55℃では発酵時間10分までは発酵力が持続したが、その後発酵力は停止した。一方、75℃における発酵力は、3つの酵母とも55℃よりも若干大きな傾向があった。 製造したパンの膨化力(比容積)は、サフ酵母が最も大きく、2位はとかち野酵母、3位は白神こだま酵母(P<0.05)であった。また、膨らみ方が縦に膨らむもの(サフ酵母)と横に膨らむもの(とかち野酵母)があった。食味は、有意差は見られなかったものの、キメ、味、総合評価において、白神こだま酵母で製造したパンの評価が最も高かった。これらの結果より、国産乾燥天然酵母は外国産酵母と比較すると85分以内の発酵力は劣る傾向が見られるものの、製品の食感や味については好感度の高い傾向があることがわかった。

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